2019年09月

2019年09月30日

いよいよ消費税増税。

9月も終わりですね。10月からは消費税が増税されるので店内の価格表示を書き替えたり、レジの消費税率の設定を変更したりでちょっと忙しいです。
うちは軽減税率は関係ない仕事ですが食料品を扱うお店は大変でしょうね。
アレモ…((o(・ω・;三;・ω・)ノ))コレモ…
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最近リペアが忙しくてブログの更新もついつい後回しになってました。そろそろ更新しましょう。
先日からのPRSはすり合わせが終わってマスキングテープを剥がしていきます。

あらかじめ保湿オイルを塗ってますが乱暴に剥がすとフィーラーまで取れてしまうので鋭角にゆっくり剥がします。

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仕上げのオイルを塗りこみます。汚れ落としではないのでレモンオイルやオレンジオイルは使いません。

ミュージックノマドのF‐ONEオイルが香りも上品で仕上がりも綺麗でよく使っています。ただ導管を埋めてますので染み込んでいく感じはしませんね。(ケンスミスのクラシックワックスポリッシュも使います)

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アバロンのポジションマークも一皮むけて綺麗になりました。指板と僅かに段差が生じていましたがそれも無くなり指触りもツルツルです。

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弦も新しいのを張ります。今回はお客さん持ち込みのエリクサーです。

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フレットの高さがほとんど変わらなかったのでナットはそのまま使っています。(あらかじめお客さんにはお伝えしてましたがフレットのエッジ処理は課題が残りますね…)

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ともあれ完成です。
ツカレター_( _* -﹏-)_  ก(ー̀ωー́ก )オツカレサン

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それと入れ替わりにもう一本ご依頼いただいたのは既にお知らせの通りです。

今度はカスタム24ですね。ちょっと分かりにくかも知れませんがコリーナバックです。こちらも同じフレットへの交換と指板の導管を埋める作業をご依頼いただきました。

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作業内容はほとんど同じなのでいきなり完成写真です。(拡大して粗探しするなよ)

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こちらは弦をSITに張り変えました。普段はエリクサーを使われている方ですがSITもお気に召していただけたようです。

ナットはそれまでに他の工房で交換されていましたがこちらも高さは充分ありましたのでそのまま使っています。2本ともフレット磨きの苦労から開放されてとても喜んでいただけたようです。


littlestone5014 at 20:01|PermalinkComments(2)

2019年09月23日

ステンレスフレット。

世に出回っているギターのフレットはニッケルシルバー(洋白)製がほとんどです。定番の素材として昔から使われていますが手の汗で色が褪せたり、ひどいと錆が出てくるので定期的に磨く必要があります。

しかしフレットを磨くのは(特に弦が張ってあると)億劫なものです。そこで出てきたのがステンレスフレット。ステンレスなので錆びずいつまでもピカピカな状態を保ってくれます。
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↑前回からのPRSですが新たに打ち込むフレットが正にそのステンレスです。
とにかくフレットを毎回磨くのが大変でお困りのご様子です。今回はお客さんとの協議の結果フリーダム製を使う事になりました。

スピーディー(硬い)とウォーム(柔らかい)の2種類があるのですが今回はウォームを使います。スピーディーは硬すぎて自分の技術ではまともに打てません。(どうしてもという場合はご相談ください。条件等によりお受けできる場合があります)

素材の硬さの違いは音にも表れるようです。詳しくはこちらのメーカーサイトをどうぞ。
((ρ(^‥^=)~ コレコレ
フリーダムカスタムギターリサーチ ステンレスフレット

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ウォームはステンレスでもかなり柔らかいので切ったりRを付けたりは楽ですね。
ただ独特の粘りがあって打ち込み時のハンマ-の力加減が難しく、当て方がまずいとすぐ曲がったりねじれたりしてこれはこれで難儀します。

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ひとまずすべて打ち終わりました。指板のRに馴染ませるのは一苦労です。

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余分をカットしてヤスリでざっくり整えます。ここは比較的簡単です。(これが硬い方のステンレスだとそれはそれはもう、えげつない手間が掛かります)

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フレットの端っこは切り立っていて見るからに痛そうですね。実際に指が切れる程です。

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側面は普通のヤスリで落として上面はフレットファイルで落とします。
柔らかい素材なので削る事自体は簡単ですが、粘り気が強いので綺麗な形に仕上げるのは(個人的に)少々難しく感じる所です。

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こんな感じ。あとはすり合わせの時にペーパーを掛けて更に整えます。

最近は球面に加工する工房も増えておりますが自分はよぅ出来んのでフレットの有効長を最大限に使うためにここまでにしておきます。指板にヤスリの跡が残ってますが最後に指板の角を丸めるので目立たなくなります。

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すり合わせです。PRSはネックの精度が良いのでこの作業は本当に軽く擦る程度です。
作業自体は通常のフレットと大きく変わる所はありませんがステンレスフレットを綺麗に光らせるのにはちょっとした技が必要です。

幸いな事に前職場でフリーダムさんからその極意を詳しく伝授していただきました。ちょっとここに書く事は出来ないのですが知らなかったら無駄にフレットの寿命を縮めていたかも知れませんね。(続く)


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2019年09月18日

導管埋めます。

専門学校では製作時のフレット打ちはもちろんフレット交換の実習もありました。
ひととおり学んで卒業後も現場で経験値を重ねてきましたが今でも難易度の高いリペアです。ここ数年でいくらかまともになってきましたが技術は本当に並レベルと思います。

ですので現在フレット交換をお考えのお客さんはサブギターなどで私の技量を判断されてからがよろしいかと。(いまSNSでフレット交換が騒がしいので…)
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↑実は先日からのPRSはそんなリピーターさんのご依頼です。
こちらは2本目で、終了時に3本目のご依頼をいただきました。信用を裏切らないように頑張らないといけません。

そのPRSなんですがフレット溝の底に接着剤のような物が流されているので専用のノコでさらっておきます。これをしておかないとフレットの足がつっかえて奥までしっかり入らない事があります。

刃の厚みが0,5ミリと0,6ミリの二種類あるのですが今回はフレットの足が細いので0,5ミリを使ってます。

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と言って必要以上に溝が深くなっても意味がありませんのでストッパーを貼り付けてます。
アイスノボウ!( *゚∀゚)σ)) d(-`ε´-;) シーッ

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今回はフレット交換と併せて指板の導管を埋める作業もご依頼いただきました。
手垢がすぐ導管に詰まって掃除が大変との事です。作業の前に詰まっている汚れを地道にホジくり返します。木材固有のヤニもあって結構な時間が掛かります。

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それが終わったら特製のウッドフィーラー(成分は秘密。僕と依頼主さんだけが知ってます)を導管に擦り込みます。

導管を埋めると見た目が綺麗で手垢も入りにくいのでお手入れも簡単です。欠点は手の汗が吸われにくくなるのと、メンテ用の指板オイルが染み込みにくくなる事ですかね。

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非常に乾燥が遅いので数日放置します。

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しっかり硬化したら表面を磨きます。完全に埋める事は出来ませんが目立つ導管は埋める事ができました。

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さて次はいよいよ緊張のフレット打ち込みです。(続く)



littlestone5014 at 18:23|PermalinkComments(0)

2019年09月11日

フレット溝の補強。

フレット交換で肝要なのは新しく打つフレットがどれだけ指板にしっかり固定できるかです。
一度フレットを抜いた指板は溝が広がって保持力が弱くなるのでいつもどうしようか悩むところです。
(σ´ .ω.`)...サテ ドウシヨウカナ
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という事で前回フレットを抜いたPRSはフレット溝に瞬間接着剤を流します。脆くなった溝はしっかり補強しておかないとフレットが簡単に浮いてしまいます。

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クラフトテープを折り返したものをフレット溝に差し込んで、これに瞬間接着剤をちょんちょんとね。

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先の尖ったもので溝の入口まで誘導してあげたら毛細管現象で奥まで流れていきます。

瞬間接着剤は粘度の低いもので尚且つ開け立ての新しい物を使います。古くなると粘度が増して奥まで行き渡りません。ダイソーの小分けタイプがケチらず使えていいですね。

ちなみに瞬間接着剤が古くなって粘度が上がった状態を「瞬間が風邪ひいてる」とか言います。ネトーっと糸を引く様子が鼻水みたいだからでしょうね。

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これをすべての溝に行います。あとで専用のノコで溝をさらうので若干多めに流します。「完全に埋めたら?」という声も聞こえますがそれは溝を切り直すのがしんどすぎます。

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1フレットまで来たら折り返し。今度は反対側です。

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蝋引きなので接着剤はハジかれるのですがやはり限度があります。溝に接着されそうになったら新しい物に交換します。(たくさん作っておきます)

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すべての溝に接着剤を流したらしばし放置。
_(:3 」∠ )_ヒトヤスミ

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硬化したら表面をならします。
このあとフレットを打つ訳ですがその前にもうひとつご依頼をいただいているのです。(続く)


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2019年09月08日

ローズウッド規制緩和。

ギターの指板などでお馴染みのローズウッドが2017年の1月からワシントン条約で保護の対象になってしまったのは皆さん記憶に新しいところだと思います。この決定は楽器業界にとって大変な打撃で、深刻な経営難に陥るメーカーもありました。

ところが今年の8月の会議で完成楽器や部品に加工されたローズウッドは輸出入の規制から免除される事が決定しました。おそらく適用は今年の11~12月ごろではないかと予想されています。業界の景気に弾みがつくといいですね。
(*ˊᗜˋ*)ヨカッタヨカッタ
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↑そんな今日のブログはそのローズウッドをネックに採用したPRSのカスタム22です。指板にはハカランダが使われています。(ハカランダは相変わらず保護の対象です)

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フレット交換のご依頼をいただきました。職人の腕前はナットを交換させれば分かると言われますがフレット交換もなかなか技量が試されるリペアです。

自分が使うギターなら何とも無いんですけどお客さんのギターだと毎度胃が痛くなる作業です。
デキルノ?(;・∀・)σ (›´ω`‹  )ヤリマストモ

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ひとまずフレットと指板のキワに水を染み込ませます。
以前のレスポールカスタムの時と重複しますがふやかして指板がチップする(欠ける)のを最小限に留める工夫です。(状況によってお湯だったりアルコールだったりレモンオイルだったり何も使わなかったり…)

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水が染み込む間に道具を準備。まぁいつもと同じですね。

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フレットにハンダごてを当てて熱を入れます。
ハンダごては熱容量の大きな100Wです。コテ先も太くて当てやすいです。(ストラトのスプリングハンガーにアース線をハンダ付けする時にも活躍してくれます)

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ゆっくりクイキリの刃を滑り込ませてフレットを浮かせていきます。ハカランダ指板なのでいつもより緊張しますね。

この時の音と手応えで指板が割れそうにないか判断して割れそうなら少し水を追加してまた熱を入れます。ここを横着して強引に抜くとヒビが入ったり、大きくチップしたりでその後の修正にものすごく手間が掛かります。急がば回れ。

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ちなみにこのクイキリは刃をグラインダーで極薄に削った特製です。専門学校時代に支給された物で今でも愛用しています。(その時の先生が作ってくれました。T平先生ありがとうございます)

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どれだけ慎重に抜いてもまったくのノーダメージという訳にはいきません。フレットが抜けたらすぐにドライバーの軸などを転がしてめくれた所を押し込みます。(あとで瞬間接着剤を流して固めます)

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ひとまず5本抜き終わりました。まだ先は長いね。

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どれぐらい時間が掛かったか覚えてませんがとりあえず全部抜けました。まずは一段落。
_(⌒(_´-ω-)_ ツカレタ

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こちらがそれまで頑張ってくれたフレットです。お疲れ様でした。(続く)


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