2019年12月

2019年12月29日

グレッチフレット交換編・その3。

今年の営業も明日30日までとなりました。おかげさまで今年も無事に年が越せそうです。
(:3_ヽ)_ イロイロアッタネ…
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↑さてさてフレットを打ち終えたグレッチは指板からはみ出ているフレットの余分を削り落とします。
普段はフレットの有効長を最大限に生かすためにヤスリは結構立てて削りますが今回はバインディングのエッジが斜めに落とされていたのでやや寝かせ気味です。

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この時なんですがヤスリは逆反りしてる側(画像のスケールを当てている側)で作業します。反対の順反りしてる側だと先端がつっかえて非常に作業がしにくいです。

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削り終えたらすり合わせですがその前にもう一度すべてのフレットを叩いておきます。きちんと打ったつもりでも違う角度から眺めるとしっかり打ち込めていないフレットも見つかるものです。

ほんとにもう今頃なんですがフレットセッターを導入しました。真鍮製でハンマーの打撃力が効率よくフレットに伝わるので格段に作業スピードが向上しました。

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それが終わったらすり合わせです。なかなか上手くフレットが打ち込めたので省略しようかと思ったのですが楽器としての精度を上げるために軽く摺っておきます。

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作業はいつもと変わりませんが最近は仕上げのコンパウンドに某所より頂いた物を使っています。これがピカピカに光るので重宝しております。(M川さんありがとうございます)

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指板修正時に出たバインディングの角を丸めます。見た目もキレイになりますがネックを握り込んだ時の感触が良くなります。

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フレットが高くなるとナットは新調するのが一般的ですが今回はまだ使えそうでしたのでメイプルの突板を貼ってカサ上げします。弦溝を瞬間接着剤で埋めるよりずっと長く使えます。

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突板は少し厚めの物を貼っていますのでペーパーで削って高さを大まかに調整します。当たり前ですが削りすぎたらやり直しなのでちょっと手前で止めておきます。

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ネックに接着して最終的な調整(弦溝の切り直し)の後に上面の余分を落とします。

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表面を磨いて完成。樹脂製なので牛骨のようには光りませんがまあまあキレイになります。(6弦と5弦の間に見えるのは「す」)

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フレットも復活して指板もキレイになりました。苦労が報われる瞬間です。
✧\\ ٩( 'ω' )و //✧ ガンバリマシタ!

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これからもどんどん弾いてあげてください。ご依頼ありがとうございました。
年始は1月4日より営業です。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

littlestone5014 at 18:39|PermalinkComments(0)

2019年12月25日

グレッチフレット交換編・その2。

さてさて前回からのグレッチはフレット溝に流した補強用の瞬間接着剤が乾燥したら指板修正です。
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かなり弾きこまれているので指板もあちこち摩耗して凹んでいます。

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しかしその凹みが全部無くなるまで削ると指板がかなり薄くなってフレット溝が浅くなってしまいそうです。

バインディングがあると溝の切り足しが難しいのと、研磨でポジションマークが消えてしまう事がある(過去に実際にやらかした)ので、そこそこで切り上げて周囲に馴染むように凹みを均します。3フレットにその跡がうっすら見えますね。

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今回使うフレットはお客さんお持ち込みのジムダンロップのフレットです。
それまで打たれていたフレットに比較すると足が細いので浮きやすく苦労します。逆に足の細いフレットから太いフレットはいくらか楽です。

Fret-Scale
さっきから細いとか太いとか言ってるのは上の画像のDの寸法です。(ジムダンロップのHPより拝借)

ごく一般的にはここが0,5ミリと0,6ミリの二種類があるのですがコンマ1ミリ変わるだけで作業性は大きく変化します。
ソンナニ? (*´・д・)ノ (-ω-* ) ゼンゼン チガウヨ

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バインディングがあるのでタング(足の部分)をカットします。バインディングに触れるギリギリでカットします。

詳しくは↑この時のブログをどうぞ。


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バインディングはアセトン等の溶剤で溶かして貼り付けられるのですが、その時の溶けたバインディングが溝の中まで入り込んでいる所があります。

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ほとんど影響は無いと思いますが念の為に取り除いておきます。使っているのはタミヤのカッターノコ。専用品もありますがこれでも特に不具合は感じません。

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実際に打ち込みます。
個人的にはフレット交換の工程で最も神経を集中させる部分です。(続く)


littlestone5014 at 18:41|PermalinkComments(0)

2019年12月21日

グレッチフレット交換編・その1。

いよいよ年末が近づいてきました。色々ありましたがおかげさまで今年も何とか無事にお正月が迎えられそうです。
…φ(:3」∠)_ ハヤイモンダネ
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年の瀬を感じながらブログ更新です。
今回はグレッチのG6120です。G6120には様々なバリエーションがありますがやはり一番に頭に浮かぶのは…(ノブでもうお分かりかと思いますが)

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ブライアン・セッツァーのシグネチュアモデルですね。
それまで経営不振に陥っていたグレッチを一気に回復させたギタリストと言っても過言ではないでしょう。(楽器屋に展示されていたブライアンセッツァーモデルが盗まれるほど人気は過熱してました)


知らない人はいないと思うけど↑この人です。すっかりおじちゃんになったね。
オマエモナ~( ・∀・)σ)₃-;) ソウネ…

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さてさて今回のグレッチはフレットがかなり摩耗していますので交換のご依頼です。
毎回言ってますけどフレット交換は本当に難しいので職人としては毎度チャレンジとなるリペアです。

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弦を張った状態で各部を点検したのちに作業の邪魔になりそうな部品を外します。特にビグスビーは弦が無いとブラブラして危ないです。

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さらに細かくチェックしていきます。今回はトラスロッドの余裕が少ないので指板修正の難易度が上がります。

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よく観察してみるとジョイントフレット付近から最終フレットへ向けて傾斜を付けるfall away(フォールアウェイ)加工が施されています。弦高を下げた時のビビり防止に効果的です。

(最終フレットまで頻繁に使うプレイヤーには好まれない加工ですがそもそもそういう人はグレッチを選ばないと思う)

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フレットを抜いていきます。エボニー指板なので慎重に。

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いつものように水でふやかしてハンダごてで熱を入れます。

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いつもより水は多め、ハンダごてを当てる時間も長めにします。ここを横着するとボロボロと欠けていきます。今回は比較的きれいに抜けてくれます。

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数日放置して乾燥させたのちにフレット溝を瞬間接着剤で補強します。新しく打つフレットは足が細いのでしっかり固めておきます。(続く)


littlestone5014 at 17:58|PermalinkComments(2)

2019年12月18日

スケルベセン ぷちモディファイ。

ベースに比較するとギターの世界は保守的なようです。新しいデザインや設計のものがなかなか受け入れられません。ストラトやレスポールは登場から60年以上経過していますがそのデザインや構造はほとんど変わっていません。

しかしそんな状況も少しずつ変化してきて、ここ数年で斬新なアイデアを持つギターも少なからず見かけるようになりました。ストランドバーグ、S7G、オームズビーなどはご存知の方も多いのではないでしょうか。
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↑こちらもそんなギター。ポーランドのハイエンドメーカーSkervesen(スケルベセン)のギターです。実物は初めて見ました。

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バイパーと呼ばれる非常に独創的なヘッドシェイプです。このデザインを考え付くのも凄いですが実際に形にするのはもっと凄いです。単なる思い付きだけでは形に出来ません。
⸜( '꒳ '* )⸝ スゴーイ‼

Skervesen Guitars
詳しくはこちらの↑メーカーサイト(英語)をご参照ください。固定観念に囚われない美しいデザインのギターばかりです。

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ご依頼はボリュームとPUのセレクタースイッチの場所の入れ替えです。ボリュームが手元に近すぎて演奏中に勝手に下がっていくのにお困りのご様子です。

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作業に取り掛かります。いやいや裏パネルもお洒落ですね。ボディバック材と同じアッシュで作られています。メーカー名も彫られていて仕事が細かいです。

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中の配線も几帳面に取り回されています。アースの落とし方が独特ですね。そうか、こういう方法もあるのか…
(..。)フムフム

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ボリュームポットの取り付け穴は約10ミリで、スイッチ側は約12ミリです。小さい方は広げればOKですが大きい方は小さくしないといけません。今回は特製のカラーを挟みます。

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出来ました。配線の長さにも余裕がありましたので入れ替えるだけでした。

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あとは弦高とオクターブチューニングの調整です。チューニングはドロップG(全弦一音下げで7弦のみ更に一音下げ)で7弦のゲージは60です。

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各弦独立タイプのブリッジです。これも最近よく見かけるようになりました。

調整は黄色のネジを緩めるとロックが解除されてサドルが上下と前後に動かせます。赤のネジで弦高を調整したら手でサドルを前後させてオクターブチューニングです。すべて終わったら黄色のネジを締めてサドルを固定します。

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7弦のナット溝がやや浅く、つまりナットでの弦高が高すぎてローポジションでのピッチがシャープ気味でした。

少し弦溝を削って弦高を下げますがあんまり攻めすぎるとビビりも出るので加減が難しいところです。(ピッチの問題はナット以外にも要因がいくつかあるのですが話が長くなるので機会があればそのうち)

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という事で完成です。作業自体は簡単でしたが高価なギターなので緊張しましたね。ご依頼ありがとうございました。


littlestone5014 at 18:18|PermalinkComments(2)

2019年12月14日

ピックアップのタッチノイズ対策。

エレキのピックアップにとってノイズは付き物です。ノイズも味わいと言われますが減らせるのであれば減らしたいものです。
キニスンナヨ… ( ´σ_`)  “o(>ω< )o” キニナル‼
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↑今回はそんなトムアンダーソン(以下トムアン)のギターです。ポールピースに触れるとジーっというノイズが出ます。

トムアンに限らずポールピースに直接コイルが巻かれているピックアップではよくある症例です。特に両端(6弦と1弦)のポールピースはコイルとの密着度が高いのでノイズが激しいです。これはコイルの巻き始めがホットになっているピックアップではよくありまして故障などではなく構造上仕方がないのです。

人体は電波を拾うアンテナとしても機能するのでノイズもよく集めます。なのであらかじめ弦などに触れてこのノイズをアースに落としておけば予防できますが気になると言えば気になります。

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そこで今回はポールピースをアースに落とす加工を施します。こうしておけばポールピースに触れてもノイズは出ません。

ただしデメリットもあって(施工前にお客さんにもお伝えしていますが)ポールピースをアースに落とすと高域成分も落ちてしまいます。通称ハイ落ち。どれぐらい落ちるのかとよく聞かれるのですが感じ方は人によって様々なのでやってみないと分からないと言うのが正直な所です。

ただ今回はピックガード裏とキャビティ内にかなりしっかりしたシールド処理が施されていますのでここからポールピースをアースに落としてもそれほど変化は無いのではと予想します。(すでにハイ落ちしてるはず)

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フロントとリヤのピックアップにはプラスチック製のベースプレートが付いています。作業はまずこれを外す所からです。

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間にポッティングのワックスが浸み込んでますのでネジを取っただけでは外れません。リード線を切らないようにそーっと外します。

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ポールピースがコイルとショートしていないか確認します。ショートしているポールピースはアースに落とせません。

特に6弦と1弦はショートしている事が多いのですが指が触れやすいのも6弦と1弦のポールピースなので悩ましいです。今回は幸いすべて絶縁されていました。(絶縁されているのにノイズは伝わるってのがややこしい…)

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ポールピースに触れるように銅箔テープを貼ります。

タッチノイズが酷かったのはネック側のコイルだけでしたのでブリッジ側はそのままでもよかったのですが念の為に両方とも落とします。(おそらくネック側コイルは巻き始めがホット、ブリッジ側コイルは巻き始めがコールド。ハムバッキングの構造からしてそうなってるはず)

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貼っただけでは導通が怪しいのでポールピースと銅箔テープをまたぐように導電塗料を塗りますが、その前にパーツクリーナーでしっかり脱脂しておきます。

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ポリ塗装用の導電塗料を塗ってポールピースをすべて導通させます。(ラッカー塗装用の導電塗料だと食い付きません)

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あとはこれをアースに落とすだけです。ベースプレートのネジ穴の所に銅箔テープを貼ります。

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ぐるっと裏側まで回して…

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ラグにリード線をハンダ付けして取り付けネジと共締めしてアースに落とします。

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フロントとリヤは簡単でしたがセンターのピックアップは苦労しました。

見た目はシングルですが縦二層のハムバッキングです。しかも上と下のポールピースが独立しているので一旦上下のコイルを分離しないといけないのですが非常にリスクの高い作業です。

ピックアップがお釈迦になる可能性がとても高いので詳しい方法は伏せておきます。画像から何となく想像してみてください。(本当に危ないから真似しないように)

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もう一度すべてのポールピースがアースに落ちているか確認です。しつこいようですがアースに落ちていないとまったく意味が無いのです。

それにしてもトムアンほどのメーカーがこの問題に気付いていないとは考えられません。少しでもハイ落ちを防ぐためでしょうか。(それともピックアップに触るなと言っているのか…)

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何とか完成です。タッチノイズも無事に消えて一安心です。ご依頼ありがとうございました。
(o´・ω・)ノ


littlestone5014 at 19:36|PermalinkComments(0)